stay at homeで暇なので必然的に写真集を眺める時間も増えている(笑)
そんな中ハービー・山口氏の写真集「代官山17番地」のファーストエディション(1998年刊行)と新編(2018年12月刊行)を今更ながら改めて見比べてみた
1.写真集の全体について
まず ざっと新旧写真集の外観などを比較してみたい
First Editon(1998年) | New Edition(2018年) | |
Format | ハードカバー | ソフトカバー |
Size | A4変形(270*220) | A4変形(280*210) |
Pages | 144ページ | 160ページ |
ページ数を見ると新編の方が若干多いが初版はハードカバーであるため写真集全体の厚みは初版の方が厚い
それにやはりハードカバーである初版の方がずっしりとした重みもあり写真集として立派な印象を受ける
紙もクリーム色の初版に対し新編はホワイトでかなり印象が違う
そして何よりの違いは写真集のサイズで同じA4の変形サイズながら 初版は横長なのに対し新編は縦長になっている点である
実は6×6の写真を掲載する場合はこの違いは結構大きくて 1枚1枚の写真は初版の方が大きく掲載されている
ちょうど新編でややページを跨いで印刷されている写真があると思うが 初版ではあのサイズの写真がきっちり1ページに収まっているのである
2.印刷について
印刷については新編の方は最新の印刷らしく総じて初版よりコントラストが高くプリントされている
新編の方も↓の印刷会社のコメントのとおりかなりハービーさんの作風である諧調豊かなモノクロームを表現することに相当の拘りをもって印刷されたようであるが 僕個人としては圧倒的に初版の方が好みである
というのも(ローライフレックスを使ったことがある方ならわかると思うが)そもそもローライフレックスのレンズで撮った写真はコントラストが低く諧調豊かな優しいネガとなるので コントラストが低い初版のプリントの方が僕のイメージする”ローライフレックスで撮った写真”にマッチしているのである
加えて同じ作品を新旧でじっくり比べて観てみると はやりハービーさんらしいプリントは初版の方ではないかと感じるのである
今回 改めて1枚1枚を比べて観て 同じ写真でも新旧で受ける印象が結構違うことに驚かされた
と同時にやっぱプリントって(撮るのと同じくらい)大切だなぁ~とも…
3.収録されている写真について
さて ここまでこの長い記事にお付き合いいただいている方はこれが一番気になるところかもしれない(笑)
かくいう僕自身も新旧写真集のこの違いが知りたくてこんなことを始めた訳のだから…
新編が発売された時の出版社の本の紹介文には”構成、デザインを大幅改定、ハイエンド印刷で未発表作品も多数収録”と書かれていたので 新編の方には初版で掲載されていない写真も追加で収録されたんだな…と漠然と思っていた
ところが今回新旧写真集をパラパラめくっていると初版にしかない写真があることにふと気が付く
そうなると違いを調べないわけにはいかないということで調べました(なんせ外出自粛で暇なんで(笑))
◎初版にのみ掲載されている写真…49作品
初版で掲載されていたかなり数の写真が新編に掲載されていなかった
これは意外でした
初版にしかない49作品のうち 人物が写っていないスナップ写真は19枚だった
逆に言うといわゆるストリートポートレート30作品分が新編には掲載されていない訳で 改めて見るとどれもが心惹かれる素晴らしいポートレートであり 何故新編で掲載されなかったのか大変残念であり不思議で仕方ない
もちろん新編にしか載っていないポートレートもあるわけだが この30作品の有無が(その写真構成と相まって)写真集全体から受ける印象を大きく変えていることは間違いないと思う
なおこれとは別に 初版には1ページに小さな写真サイズで3枚掲載されているページが延べ6ページ(計18作品)あるのだがうち7作品は新編に掲載されていない写真であった(すべて人物なしのスナップ写真)
したがって本作品を合わせると計56作品が新編には掲載されていない作品ということになる
◎新編にしか掲載されていない写真…41作品
次に新編にしか掲載されていない写真は41作品であった
内訳は人物が写っている写真が24作品 人物の写っていないスナップ写真が17作品であった
先に書いた通り”未発表作品も多数収録”のキャッチコピーから新編には追加収録された写真がたくさんあるイメージを勝手に抱いていたが 実際のところは作品の入替えが行われたと考えるのが妥当であることがわかる
加えて新編に追加された人物が写っている24作品はストリートポートレートというよりもスナップ写真的要素を多く含んでいる作品も多々あるのに対し 初版にのみ掲載されている49作品中の30作品は一対一で対峙したストリートポートレートが多いという違いがある
そしてこのことが上記に書いた写真集全体から受ける印象の違いに繋がっていると思われる
なおこれとは別に新編には2ページにわたり小さいサイズの写真が3枚掲載されているが 内2作品が新編のみ掲載の写真であった(すべて人物なしのスナップ写真)
したがってこれらを合わせると計43作品が新編で追加掲載された写真ということになる
◎別カットの写真…5作品
新旧写真集で同じ被写体の別カットが掲載されている写真が5作品ほどあった
うち1作品は人物が写っているものとそうでないものなので別カットいえるかどうかは甚だ疑問ではあるけど それを除いてもこれは実に面白い発見であった
親子2人の写真で子供の頭に手をのせているいるものいないもの
恋人同士が抱き合っているシーンを別アングルで撮ったもの
野菜を指さす老夫婦の写真
共同炊事場の写真…
ハービーさんが当時 どちらを掲載するか迷った作品なのか 或いは今見るとこっちの方がいいね!となったのか 色々想像すると面白い
今回は暇に任せて新旧 「代官山17番地」を改めてじっくり鑑賞しました
結構疲れましたが新たな発見も多くあり面白かったです
そして無性にローライフレックスで撮りたくなりました(笑)
1日も早くコロナウィルスが収束し 穏やかな気持ちでまた撮影に出掛けられる日が来ることを心から願ってます
長文お付き合いありがとうございました
大変興味深く拝読させて頂きました ^^
流石に新旧両方ともお持ちなのですね、私はNewの方しか持ってませんが紙質やコントラストの強弱で
受ける印象も随分と変わってくるものだと言う事がよく分かりました ^^
そう言う意味ではクリーム色の紙やモノクロの階調の豊かさを追求されるハービーさん好みのプリントが
満載された代官山17番地、Mさんは絶対に初版に軍配を上げるだろうなと思いました ^^
同じ様に手元の写真集をあれこれ見直している毎日ですが近所の散り始めた桜を撮りに出掛けたり在庫の
中からちょっと手直しをしてブログに再アップしたりして大人しくしておりますが本当に1日も早い収束を
願ってやみません。M さんもどうぞお気を付けてくださいね。
coba-gさん、どうもです。
長文にお付き合いいただき、ありがとうございます。
あまりの暇さに変なことを始めてしまいました。(笑)
是非一度coba-gさんにも初版を見ていただきたいです。
なかなか深いものがありますよ。
しばらくはおとなしくしてないといけませんね。
お互い気を付けましょう。
Mさん、こんにちは
詳細な解説、ありがとうございました
私は初版は持っていませんが、手許にあるかのように違いが理解
できました
出版された写真集には、相当の意図や苦心、または自由と制約の
せめぎあいのようなものが内包されているものなのですね
※私事
外出自粛令のもと、週末にはMMにSummicronとSummiluxを付け
替えて(室内ですが)、自分なりに写りの違いなどを検証しようか
などと考えています
tomatoさん、どうもです。
僕の暇つぶしにお付き合いいただきありがとうございます。(笑)
是非、tomatoさんにも初版を実際見ていただきたいです。
結構、面白いと思います。
MMによるcronとluxの検証、面白そうですね。
是非ご感想等々を教えていただけると嬉しいです。
こんにちは ! !
オリジナルがいい場合もありますが
普通のものは、後から出るものが一般的にはいいですね^_^;
味わいある写真が一杯掲載されていそうですね
うーん、どうしてもフィルムは味わいあるなという先入観が先に走ってしまいます
voyagers-xさん、どうもです。
家電とか車とかの性能はオリジナルより後から出たものの方がいいですよね。
でも、見方を変えれば、車だって旧車の方が魅力的なものがたくさんありますので、必ずしもそうとは限らないようにい思います。
ちなみにこの新旧の写真集は、どちらも1996~98年ごろにローライフレックス2.8Fで撮られたフィルム写真です。
とても面白く拝見しました。
なんで写真が見やすい横長版の装丁から縦長版になったのだろうと思いましたが、本棚に並べた時、縦長版の方がしまいやすいということも原因の一つなのかなと思います、そういう微妙なことが写真集の売れ行きに響くのかもしれませんね。 掲載される写真のセレクトも、ハービーさんの思い入れや意向もあるかもしれませんが、出版社の考え方、編集者の思惑なども大きいのだろうと思います。
スコットさんが写真集を出された時のお話や、私がわずかですが商業用に写真を提供した時も、写真そのものを純粋に考える写真家と、それを商業ベースに載せようとする出版社とは、少し考え方が違ってくるというのが私の印象です。
自分の絵を描きたい画家と、売れる絵が欲しい画廊のせめぎ合いみたいのが、写真集でもあるのではないかなと思います。
初版本の方がハービーさんの思っているものに近いのか、改訂版でハービーさんの思いが叶えられた部分があるのか、お話を伺えたら面白いだろうなと思います。
izumiさん、どうもです。
写真集の縦横問題?(笑)はなるほどなぁ~と拝読させていただきました。
ただ、僕の私的な感覚でいうと、写真集は既にバラバラなサイズで本棚に綺麗に並ぶことはあり得ない状態なので、その点からすると縦横はもうどうでもいいレベルになってます。(笑)
思えば、どうしてこうも変形サイズばかりなんでしょう。と思うくらい揃ってませんね。(笑)
写真の構成に関しては確かに出版社や編集者の思惑も多々入り込みますよね。
この記事をツイッターに連携アップしたら、ハービーさん自身からいいねとコメント付きリツイートを貰いました。(笑)
私も両方、所有しています。
どうしても、ハードカバーの方は
かしこまって見る癖が最近は(笑)
見比べてあれこれ言うだけの眼力はないのですが、
当時と今ではデジタルでの加工技術も身近なものになりました。
その分、今の方が撮影者の意図が反映されやすい時代なのでしょうが
結果長いキャリアお持ちの方は
今より一期一会の想いは強かったのだろうな、なんて感じたりもします。
なおにゃさん、はじめまして&コメントありがとうございます。
デジタル技術はかなり身近なものになりましたけど、ハービーさんレベルの写真家ともなるとネガの作成から追い焼きや焼きこみ等々までプロの方のサポートもあり、撮影者の意図は存分に反映されている気もします。
その一方で我々アマを取り巻く環境は、なおにゃさんがおっしゃるとおりかなり身近になりましたね。
こんばんは!
とても内容のある記事で初版を見たくなります!!
紙の色ってすごく気になります。すっきり見えたり、温かみが伝わってきたり・・・
僕は最近「雲の上はいつも青空」を寝る前に一話ずつ読み返しています。
勿論、そこに載せられている暖かな写真も楽しみなので^^
良い眠りにつけます(笑)
mashamashaさん、どうもです。
紙の色もそうですが、印刷そのものもだいぶ違ってますので、同じ写真でもかなり印象が違うものがありました。
是非、mashamashaさんにも実物を見ていただきたいですねー。
雲の上はいつも青空…
良いですねー。僕も久しぶりに読んでみたくなりました。